このブログは、水野ゆうき千葉県議(選出区:我孫子市)との裁判に関する一連の状況を、利害関係者である福嶋浩彦が広くお知らせするために立ち上げたものです。

2015年11月15日日曜日

水野ゆうき千葉県議による仮処分取下げを批判する

弁護士 佐 藤 典 子


敗訴を忌避したか?水野氏の姑息な仮処分取下げ
 千葉県議水野ゆうき氏は、10月26日付で、我孫子市議早川真氏及び我孫子市を相手取って起こしていた議事録取消しを求める仮処分訴訟(注1)を取下げました。
 この事件は既に双方の主張・立証が終って結審し、11月には裁判所の判断が出ることが決まっていたものです。このタイミングで訴えを取下げるというのは、水野氏が敗訴を認めたことと同じです。ところが、水野氏が自身の公式ホームページで述べている取下げ理由は、不正確な自己弁護であり、読んだ人に誤解を与えます。
 まず、「証人尋問等ができず、手続き及び証拠の制約のある仮処分手続きでは、真相究明ができないと考えたからです。」と述べている点については、弁護士が代理人に就いている以上、その制約の中で立証する種々の方法や、正当な理由があれば証人尋問のできる口頭弁論を開くよう要請する方法もあることは分かっているはずです。そもそも、仮処分手続きを選んだのは水野氏の方です。
 

言論封殺が最大の問題。問われる水野氏の憲法理解
 次に、「本件事件は、8000枚の公選はがきのうちのたった1枚に記載ミスがあった可能性について針小棒大に問題としているものであり」と述べている点については、完全に事実に反します。
 この事件は、水野氏が申立てた早川市議の議会発言の議事録取消し要求が、言論の自由を保障した憲法21条に反しないかどうかが第一の論点です。
 民主主義社会である我が国においては、公の選挙で選ばれた人物(県議会議員はこれに当たります)に対する批判は、その内容が名誉を傷つけるものであっても原則自由とされています。例外は内容が全くの虚偽で、単なる誹謗・中傷目的である場合などに限られます。これは最高裁の判例でも明言されています。
 現に裁判所もこの事件を憲法に関わる問題との認識から合議体(3人の裁判官の合議による)で審理することに決めていました。(注2)

  次に、推薦人欄に死者の署名のある公選はがきを水野ゆうき選挙事務所が発送したか否かも論点です。それは、早川市議の発言が事実無根の中傷であるかどうかという意味で重要なのです。そして、そういう葉書が現存したことは、実物が提出されて明らかになりました。しかも、署名を無断ですること(死者ですから承諾はありえません)は、単なる「記載ミス」とは言えません。
 水野氏は今後「本裁判に移行することとしました」と言いながら「延々と争うことは、県議会議員として有権者の皆様に付託された職務に邁進しなければならない私にとって一体どれだけの意味があるのかという疑問があります」「本訴提起の時期については今後の情勢を見て判断することとします」と逃げを打っています。本裁判でも勝ち目の無いことがはっきりしているからです。

 水野氏は、亡くなった夫人の名前を公選はがきの推薦人欄に書かれた被害者である福嶋浩彦氏を相手取って、そのことに関する福嶋氏の発言を差し止める別の仮処分(注3)も申立てています。私はこちらの事件で福嶋浩彦氏の代理人を務めています。二つの事件の重要な論点は共通で、福嶋氏の事件も近々結審します。
 水野氏が仮処分申立を大々的に発信・宣伝したことにより、多くの人々が裁判の行方に関心を持って見守っています。しかもその発信の中で、水野氏は福嶋氏の名誉を毀損する事実無根の多くの発言をしました。訴訟の相手方とされたことにより、対応に多大な時間や労力を費やさなければなりなかったことも福嶋氏が被った被害です。これらの被害は裁判所の正しい判断がなされることによって、かなりの程度回復されると期待しています。
 従って、水野氏が早川氏及び我孫子市相手の事件で行ったように、取下げることで裁判所の判断を回避することは、絶対に止めていただきたいと思います。
 この期に及んで取下げなどと言う姑息な手段をとらず、堂々と裁判所の判断を受けるよう、水野氏に強く要請します。


(注1)2015年4月千葉県議会議員選挙に於いて候補者水野ゆうき氏の公選はがき推薦人欄に、当時亡くなっておられた福嶋浩彦氏夫人の名前が書かれてあった件。これを我孫子市議早川真氏が議会で取上げたことについて、水野氏が早川氏と我孫子市に議会発言取消しとインターネット動画・議事録からの削除を求めた仮処分申し立て。

(注2)仮処分事件は通常単独事件と言って一人の裁判官が担当します。しかしながら、憲法問題が絡むなど社会的影響が大きい事件は、合議事件として3人の裁判官で構成する合議体に回されることがあるのです。

(注3)水野氏の早川氏と我孫子市に対する仮処分申し立てが言論を封殺し、市民の知る権利を制限するという危機意識のもとに福嶋氏が水野氏に公開質問状を送るなどして糾したのに対して、水野氏が起こした、福嶋氏のこの件に関するすべての発言を差し止める旨の仮処分申し立て。